2005年11月21日

千年帝国 「鎖」




「あぁ………すまないね、また、笑ってしまったか。

  だって、おまえは、いつも、同じ努力をしようとするから。

 都合、わたしの説明も、最初はいつも、同じになる。


  ほら………わざわざ、目覚めなくてもいい。

 それは不要の手間だから。


  いつもどおり、そのままで。

 どれほど<真実>に恋焦がれても。

  ………わたしの声だけ、聞いておいで」




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「そう。名前は無意味な標識。
 分別には、便利だが」



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「肉体? さらに無意味!
 最後には芥子粒ほどの証拠も残らない」



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「魂………! つきなみだが、とにもかくにも、まず、それだ!

 心。 ………掴めるものなら、誰しも掴むのでしょうがねぇ。

  さて、その価値を語るのに、相応しいの言葉を、
 わたしは、持たない」



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「おかしいくらいに、
  おまえは、ほんとう、しょっちゅう迷うね。………けれど、
 おまえがおまえであること、
  それ以外に、この世になんの意味がある?」



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「いとおしいほどに、よごされ、傷つくべく、
 用意された」



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「それをもつがゆえに、
  わたしはおまえを楽しむ」



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「おまえを待つ時間は
  苛立ちと、至福。

 おまえの居る時間は、
  さらに、その百倍の慈しみと憤り。

さぁ、もうこのくらいで十分だろう。

 目をお開け。
人に許された時間は、あまりに、短い………!」



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「 おまえは、わたしに遭わぬだろう。
 しかし、けして、手は離さぬ。
  おまえは………つねに、わたしのもの」



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 ………呪うべくは、すべての、『鎖』………!

せめて、目に見えるものであるならば。

 断ち切るすべも、あるものを。



*
ニックネーム かずマタ at 02:29| 千年帝国

2005年10月28日

「悪/熱」

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 夢ならば、醒めてくれよと、思うのだが。

どうも、夢ではないらしい。






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 やもたてもたまらず、ひっぱり出した。
そして、そのまま、連れて来てしまった。

 そのせいで、当分の間、世間の表舞台には戻れなくなった。
………というのに、まったく、不満も、不安も感じない。
 むしろ、別の事で今は頭が一杯だ。

 これが、どうかしているというのでなくて、
なんだというのだろう?





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 そう、この場所に逃げてくるにあたり、
彼は女を一人、さらってきた。
 いや、女をさらったから、逃げなければならなくなった。
どちらかというと、その表現の方が正しい。
 きっと。


そういう意味では、十分、彼は人生を狂わされたのだ。
 順風満帆と言うのはいささか辛い気もするが、
十分な地位もあり、社会的な信頼も持っていた。
 その地盤のほとんどが、いま、ほとんど
有効には利用できない。
 そんな状況に陥っているのだから。


 さらってきた女は、では、それと引き替えにするほど、
価値のある存在であるといえるか。
 たとえば、傾城、傾国の美女だとでも?


 ………いや、とても玲瓏たる美女だとは言い難い。
どちらかというと女傑だし、性格はそれに輪をかけて扱いづらい。
 気位も鼻っ柱も高いし、素直でないし、当然、そうなると
可愛いわけもない。


 つらつら考えると、どの角度から分析しても、
自分がこの女を伴わなければならなかった理由など、
 小指の先ほどの必要性も見いだせない。


 それなのに、連れてきてしまった。
その事だけとっても、世界は十分不条理で満ち満ちているようにも
 思われる。


 ………まぁ、すべての責を世界の不条理に押しつけるとするならば、
だが。





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 どうにも手放しがたいと思った一瞬があった。

それは認めよう。
 しかし、誰にでもある気の迷いだ。

 わからぬのはいつまでもそれを更新し続ける、
己の真意だ。

 彼に別に心を寄せている風があるわけでもなければ、
誰もが頭を垂れる彼の智に敬意を払うそぶりもない。

 むしろ、傲慢で高慢稚気て、腹をたてさせられることの方が多いのだ。
そして………
 それなのに、自分はその女をいまだ、手元におき、
いつまでもそれを許している。
 一体、それはいかなる理由があってのことか。





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 女を伴い、隠れて暮らす。

 毎日は、これまでも平板だったとは言い難い彼の歩んで来た人生の中でも、
とりわけ奇妙で、妙に穏やかで、変に刺激的でありすぎたりするが、
 また、女も積極的に彼の元から去ろうとしないところを見ると、
わりにこの生活を気に入っているのではないかと思える。


それを考えると、少しばかり………なんだ、胸の奥が泡立ち、沸き立つように、
 騒いだりするのが、自分でもたまらなく、嫌は嫌なのだが。







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 それでも。


ほんの稀に、この女が、自分の事を見て、苦笑めいてでも、
 その瞳を緩ませるとき。

己の中の何かに寂しげな横顔を見せ、
 僅かに、彼を頼る気配を見せるとき。

………彼が伸ばした腕の中で、
 黙ってその身から力を失わせるとき。


 全身に渡る得体の知れぬ震えは、
悪い熱のように、彼の胸を侵し、
 もっと得たい、もっと欲しいと、
時に激しい衝動さえ伴いそうになる。






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 保たれている現在のバランスは、非常に微妙で。


自らの指先一つで、すべてを台無しにしてしまいそうで。
 先をたぐる事が怖くなるあまり、つい、拳を握り、
逆に平然とした顔を作ってしまうけれど。


 動かないでいればいたで、
いろいろな事を思って、やはり、胸痛み、長い針でも
 心臓に突き刺されているような心地を味わっているのだ。


 本当に、自分の真意がどこにあるのか、
首をひねりたくなること、しきりである。
 ………しかし、それはもしかしたら、その女の方でも、
思いは同じであるのかもしれない。





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 この熱が、どちらかをじりじりと焼き尽くすことになるのか、
それとも、不完全燃焼のまま、鎮火となるのか。



 女も自分も、それを感じ、今はそれを待っているような気もする。
お互いがお互いに、まだ、事態を探り合っている。
 それが今、互いが過ごしている日々であるのだ。


 きっと………きっと、このままでは済まぬ。
遠からぬ日に、何か、結論を迫られる事態が起こる。
 もはや預言を受けていたかのように、
その予感は、確かなものとしてあるから。


 拒絶という大打撃に常に怯えている己をけして認めぬがゆえの、
時間の浪費。
 そう、己のことでなければ断じることもできようものを………
何かに追いつめられでもしたよううに、
 ジッと息を潜め、事態を静観しているのだ。


………いつか訪れるだろう結論が、たとえ、いかなるものであれ。
 けして、今はそれを進んで迎えに走る気はない。
そんな恐ろしいことは、とてもできそうにない。
 そんな風に思っているとはけしてけしてけして。
認めるつもりは毛頭ないが。
 半ば、露骨にばれている自分の思いに、自分で目を反らす愚も、
こうなると是々非々だ。


 甚だ受容的なこの姿勢は、自分らしくないと感じながら。
ここまで自らが他力本願になれること自体が、彼にとっては、
 もはや大発見の心地であるのだから。



 そう…………今はまだ、待っている。

 ただ、従容と、己の身を侵す悪い熱を、
骨の髄まで、味わいながら。
 遠からずやってくるだろう避けがたい事態に、甘く苦い、
戦慄さえ覚えながら。
ニックネーム かずマタ at 01:38| 千年帝国

2005年10月12日

「三点不一致の法則とその普遍性について」003/003(更新中)

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 自己ベストとして記録しておきたいようなスピードで、食事をすべて
たいらげた。
 そのくせ、何事もなかったように、しれっとして、ナプキンで唇を拭う。

急いで食べても、旨かった。

 さすが、世界に名を馳せたシェフ(の、魂だけ、だ。正確には)を、
引っ張ってきただけのことはある。
 その腕前は、まったくもって、嘉せられるべき!


 さて、それでは、と、立ち上がりかけたところで、


「お前は、勘違いをしている」


 イサクの静かな声がきこえた。

自然、腰を浮かせたまま、蔡も視線をイサクへと投げている。

 と………ヨハネに言いながら、イサクは本当は蔡に聞かせるつもり
だったようだ………細い笑みを浮かべたイサクと、
 ぴたりと目があったから、思わず顎を引く。


 ………くそ! ひるんでなるか。


 余裕を湛えた対手の微笑みに、はや、カチンときつつも、
それを表情に出すような素直な性格ならば、おそらくはいま、
こんな仕儀にはなっていない。

 イサクに向かい、何を言い出すことやらと、わざわざ、
目を細めてみせ、薄い笑みを浮かべて腕組みしてみせる。


 ヨハネはイサクが視線を彼に向けたのを見て、初めて、蔡の
存在に気付いたようだ。
 目をしばたかせて、彼とイサクの目線のやりとりに、驚いた
顔をしている。
 それだけ真剣にイサクを諫めようとしていたのだろう。

しかしそのような弟の気も知らぬげに、
 イサクは蔡を見て、続ける。


「セックスは終着点ではないよ………
  それは、そう思う気持ちもわからないではないが。

 男と女の関係に、終着点などない。
  ただ、与え、そして求めるだけだ。

 相手にさえ恵まれれば、おそらくその連鎖は永久にでも
  続けられる。

 そして、そのような相手に、
  この広い世界で………
 嫌になるような数の人間の中から、もし、
  出逢うことが出来たなら。
 きっと、人は、そのまま昇華してしまっても、
  けして、後悔はすまいよ。

  ………ヨハネ。
 男が生きる意味は、まさにそこにあると
  私は、お前に断じても良いがね?」


  ヨハネの名を口にしながら。

 その目は蔡の鼻先を、まるで、ぴぃんと視線で弾いて見せるか
 のようだ。大仰な仕草で、首を傾ける。


「まぁ、そのような思いをしたことのない人間に、なんと
  言っても、私の言葉の意味はわかりはすまい、か」


  むかぁッと来た!

  宣戦布告。
 それが今さらなら、領海侵犯だ!
  迎え撃ったところで国際法には抵触すまい!


  蔡は、イサクの言葉が、自分にあてての言葉のようには
 装われていなかった事も忘れ、手を腰にあて、馬鹿々々しげに
 首を横に振った。


「………ハ!
  理解したいとも思わないね!

 大の男が、女一人に満足して、それで、人生終わっても
 いいなんて、なんてお手軽な生き方だろう。

  男子たるもの、世に名を残す偉業を幾つ成し遂げられるかで、
 その生きてきた命の価値が定まる。

  そこに女の介入する余地などないね!

  少なくとも男から欲する必要はない。
 あるべきようにある者の所には、
  女の方から寄ってくる。

 雌の体というものは、そのように出来上がっている。
  子孫繁栄、種の保存のための本能が働くんだ。

 より優秀な遺伝子を残そうとする、
  それは生きとし生けるもののもつ、一種の真理だよ………!」


  彼の反論に、イサクの顔が、小癪な、とでも言いたげな苦笑に歪む。
 それでもいなされている感がある。
  視線で噛みつくように斜めに睨み付けると、イサクは肩をすくめる
 ことで鮮やかにそれをかわしてしまった。蜂蜜色の前髪の下から、女達を
 たやすくからめとる菫色の瞳が笑う。


 「ならば、お好きに。
   お前はそのように待っているがいいよ。
  私は、止めない」


   ぎぃぃッと、奥歯を噛みしめて思わず身をひいてしまいかける。
  引いてたまるかと思うから、かえって、肩をのりだして、
   言い返している。


 「納得ゆかないと?

   では、大中国の歴史に鑑みてみるといい!

  遠くは玄宗皇帝と楊貴妃! かの赤兎馬の英雄、呂布と貂蝉!
   近くは毛沢東と江青!

  名のある男が女を求めて、それが男のためになったためしはない!」

   イサクは手を後ろに持ってゆき、頭を掻いた。

  「………私の引き合いに出すならば、
    せめて曹操孟徳」
  
   ………こいつは!
  ひきつり笑いに片頬を歪めながら、蔡は斜めにイサクを睨みつける。


  「いつかその道楽で身を滅ぼすぞ………!」

  「望むところだ。
    潤いもなく本に挟まれて干からびるよりは、
   余程、私にふさわしい。

    思った女の肌に触れるために死に至る。
   以外に、私の死にそうな事態が思いうかぶかね?」   


   間に挟まった形で、ヨハネが、ここでどうしてイサクと蔡が口論という
  形になるのか、ついて行けずに、目だけ、慌て、困らせている。
   それは理解できぬだろう。
  だいたい、蔡にも判っていない。

   どうして自分がそのようにムキにならねばならぬのか。

  もしかしたら、イサクにも掴み切れておらぬのかもしれない。

   この男もまた、出会い方が少しばかり特殊で、相手の質はさらに特殊な、
  しかしいつもと変わらぬただの恋愛騒動に、ただ、思いもかけず、
   数少ない己の理解者であり親友と言っても良い蔡が嘴を挟んできて、
  話が少しややこしくなっている、という………
   その程度に理解であるのかもしれない。


   しかし、それにしては、自分たちは、少し、熱くなりすぎてはいないか………!



   



*****   Sorry! Now Writting!   ***** 
*****   Please Wait a minuits!   ***** 
ニックネーム かずマタ at 02:39| ショートストーリー

2005年10月05日

「三点不一致の法則とその普遍性について」002/003

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 イサクとヨハネのもめ事のど真ん中にいる女については、
蔡も知らぬ相手ではない。
 知らぬ相手どころか、かなり苛々させられている。


 不遜で。偉そうで。知識もないくせに何もかも判っている
ような顔をして。
 おそらくはこれまで誰にも負けたことなどないのだろう、
傲慢なまでの自信に溢れている。


 その顎は常に斜め30度上にあがり、背はさして高くない
くせに、人を見下ろすように見る。
 腕は胸の前で組まれているのが定位置だ。
 話した後は、その長い黒髪の裾でこちらの鼻先をはたかん
ばかりに勢いよくくるりと踵を巡らせて、後はこちらを振り
向きもしない。


 本当は、イサクとヨハネを手こずらせ、彼らを統べるマダム
を怒らせたただけで、彼自身がかかわる用などなかったはずな
のだが………いや、自慢の発明の粋たる使い魔を大破させられ
たから、恨みがないといえば嘘になるか………しかし、その顔
を思い出すと同時に落ち着かぬ心地になる、この苛々は明らか
に、あの女と話して、その鼻持ちならなさを実体験してのちの
ものだ。


 ………女の名は、葛葉涼。
年は19だから、彼より4つも年下だ。
 女であるというだけでも儒教の国の倫理観が身に沁みこんで
いる蔡からはどうしても見下げてしまう部分があるのに、この
女ときたら………!


 思い返すだけで、自然、眉が寄って険悪な顔になってしまう、
それだけで、彼がどれほど鬱陶しく腹立たしく思っているかは、
推して知れるだろう。

 ヨハネも同じだ。

 ヨハネは、あの女に、目の前でたった一人の肉親である兄で、
何をするにも共に来たイサクの中に、魔を埋められた。
 それでイサクは長い深い眠りに落ち、ヨハネがそのことに
ついてマダムに泣きついたから、彼らと個人的なよしみのある
蔡が選ばれ、彼らを助けるために乗り出してきたわけだが……
それはともかく、まぁ、あの女には恨み骨髄なのである。



 ただ、イサクは。
………イサクは違う。
 この男は、本来、女好きなのだ。



親交のある蔡ですら、その様にはいささか呆れずにはおかぬ位。
 <アーク>が世界の港から港へ航海する、その日々、三日以上、
女の肌から手を離したことはないのではないか。
 それも、同じ女ではない。おおよそ近づいてくる者は拒まない
し、目くばして近づいてこない者には面白がって覗きにゆく。



 真症の女好きなのだ。
女と名がついて、そこそこ見目がよかったり、何か特別な煌めきを
見せたなら、どうでも一度は手にいれないと、気が済まない。
 ヨハネも病気とは良く言った。
医者も、この男には診断書を書いてしかるべきだ!


 ………そんな風だから、涼の事も、彼らとはまったく別の目で見ている。
手に入れたがっているのだ。


 己になびかぬ高慢な女。
しかも、己に一杯食わせた女となれば、それは、この男的に言えば、
どうして落とさずにおかれるものかという存在だろう。
 わからないではない。
成る程、その思考回路はイサクならではと、むしろ納得してしまう。
 それに対して、潔癖なところがあるヨハネが過剰に嫌悪感を隠さ
ぬのも理解できる。


 理解できぬのは、むしろ、蔡………己自身なのはずなのだが。
そのことについては、棚にあげている。
 わざとではないが、考えもしていない。


 再び皿に向かいあいながら、まるでヨハネとイサクのやりとりは、
何も聞こえていなかったというふうに、少し冷めて食べやすくなった
魚の餡かけに取り組み出す。


 イサクが、涼に、この航海の間は手を出さぬと約束したという
その事について、考えている。


 どうせ、あの女がこの航海の間に、自分になびかぬわけがないと、
その計算あっての口先約束なのに違いない。

 涼が嫌がらなくなると、その確信があるからこそのことだ。
それに、あの女が気付いているかどうかだが。


 ………おそらくは、気などついていないだろうな。


 そう思うと、蔡は妙に落ち着かぬ心地になる。

 きっと、イサクの事を優しいと、そんな風に考え、自分は大切にされたと
でも勘違いして、感激しているに違いない。
 そこまではいかないまでも、少なくとも、それで、好感は抱いたはずだ。
それこそ、イサクの思うつぼだとなぞとは、予想もしまい。


 女というのは、そういうところ、どれほど頭が良かろうが、智恵が廻ろう
が、基本的に馬鹿なのだ。
 女は、頭でなく子宮でものを考える。
そう言ったのは、ギリシャあたりの哲人だったか?


 ………一言、言っておいてやった方が良かろうな。


 普段の食事より、箸のスピードが1.5倍。


 猛烈といっていいような早さで魚を平らげながら、骨を押さえるのに身を
触って指先についた餡を舐めとりつ、考えた目は見事に座っている。
 本来なら魚と共に食べるはずだった焦げ飯を食べ忘れていたことに気付いて、
箸先でカリカリ言わせながら、それを取り崩しつ。

 蔡は、もう、女の今、居そうな場所を、<アーク>各所を思い浮かべ、脳内で
検索している。
 


 ………蔡は。



実は、この女を巡って、彼はイサクと賭けをしている。
 この女が航海の間に、イサクを選ぶか、自分を選ぶか。
選ばれた方が、この女の所有権を得る。
 そして、選ばれなかった方はけしてもう手を出さない。


 蔡も、かつてしたことのない………そんな、理由も目的も己で知れぬ、
訳のわからぬ、しかし、意地でも負けたくない賭けを。
 イサクに負けたくないという、ただ、その一義だけで、しているのだ。


言っておくが、蔡には恋人を作った経験もなければ、女を口説いた経験も
ない。


 女を欲したいという欲求よりも、遙かに、彼の知識欲は深く、また、
それに彼を巡る日々は恐ろしく多忙であったのだ。


 そんな自分が、百戦錬磨のイサクを向こうに回して、どうやって、女に
自分を選ばせるのか………

 考えもしないのかというと、そこは学者馬鹿の馬鹿と名のつく所以。

 本気なれば、己に出来ぬことがあるとは思えない、そんな、根拠のない
自信に根ざしている。
 分が悪いのは馬鹿なりに理解している。
だから………経験を埋め合わせるように、策を巡らせる。

 人を心理面から追いつめる策謀は、蔡、お手の物である。

 それは、本来、恋愛に応用する種類のものではなかろうが、なに、本人は、
最初から微塵も恋愛のためにその女の所有権を欲しているわけではない。
 では、何故欲しているのか………


 葛葉涼は、どう考えても人の理を越えた力を持っていたから、解剖して、
その力の源がどこにあるのか、それを探りたい。
 研究材料として貴重。
 それがイサクに告げた理由だったが、だが、己がメスを持ってあの女の腹
を開く姿を明確に蔡が描き持っているかと言うと、実はそうではない。


 そして………そうではないことに己で気付いていない。
その感情の想定にすらないから、気がつけない。
矛盾を抱えながら、己の内部に矛盾が存在することなど、考えたこともない。


 だから………己に何の疑いもなく、ただ、今は、がむしゃらに食事を終わら
せて、女を探し、忠告しておこうとしているわけだ。
 その想いの、まわりくどいこと、まさに、いたましいほどだが、こうなると、
果たして気がつくことが幸いなのか、不幸なのか………なんとも、難しいとこ
ろではある。
ニックネーム かずマタ at 05:25| ショートストーリー

2005年10月03日

「三点不一致の法則とその普遍性について」001/003

三点不一致









 食堂で。
イサクとヨハネが何やら口論をしている。

 誰か捕まえて、共に食事にしようと思ってやってきたものの、
蔡は、わざわざ、彼らから少し離れた席を確保した。

 最近イサクとは冷戦中だし、だからといって、好んでヨハネの
肩を持ちにいくようなあからさまな真似も大人げない。

 君子危うきになんとやらで、淡々と、黒猿に厨房へ注文を届け
させる。

 <アーク>のコックは………コックだけでなく、ウェイター
もウェイトレスも、クルーも、彼ら以外のまぁ、誰も彼もだが
………人外であるが、別に皿の上に人の手首がまるまる出てく
るような心配はない。
 安心して、料理が届くのを待っていればいい。

 このあたり、この船の元になっており、すべての快適を約束
するための動力を提供する自分設計のシステムの素晴らしさを、
蔡はつくづく噛みしめる。

 最初にこの船の動力部分の理論を立ち上げたのは、たしか、
十二の時だった。
 この時すでに彼を見いだしていたマダムは、彼の話を聞いて、
十七までにこの理論を突き詰めて実用化できれば、誕生日のプ
レゼントとして、実現のための資金の提供しようと申し出てく
れた。
 懐かしくも美しく、心温まる思い出だ。


 こうしてイサクやヨハネが何の苦労もなくこの船の主をして
いられるのも、本来ならば、このシステムを組み上げた自分、
あってのことなのである。

 それを思うと………もう少し、普段から、感謝の気持ちや、
尊敬の念を向けられてしかるべきだという思いもしないでは
ないが、まぁ、そんな事を言うほど自分は狭量ではないので
ある。大目に見よう。
 馬鹿でも呑気でも、この双子は彼の数少ない友だ…………
それなりには、大切な存在でもある。非礼は許す。
 小人ほど小さな事に囚われると、かの孔子も言っている。


 目の前に運ばれてきた白身魚の餡かけに、スープ、あとは
飯をわざわざすこしフライパンで焦がした料理に、早速、
箸をいれながら。


 さて、何を揉めているのかと、蔡は少し、聞き耳をたてた。
食べ物が届いて、ようやく耳を他のものへ向ける余裕ができた
のだ。
 なにしろ、良く考えれば、昨日の昼から、新しく発表された
生体科学学会の研究論文に夢中になって、まるまる一日、何も
口にしていない。
 頭も体もまずはブドウ糖を要求していた。
面白そうな他人の喧嘩は、ブドウ糖摂取の、その次の次………
である。


「………なんで、今回だけ、そんな風なわけ?

  なに。何が違うんだよ。
 結局、それが終着点なんだろ?

 なら………さっさとヤっちまってよ!」


  ヨハネの声が耳に入ってきた。
 ………自然、箸の動きが止まった。何の話をしているのか、
 どういう訳か、ぴたりと話の焦点が分かってしまった。
  腹はぐるぐると強烈な空腹を訴えているのだが、手を動か
 すことも忘れてしまいそうなくらい、聞き耳をたてている。
 気配まで耳でわかるほどに。


  イサクは例によって例のごとくだ。
 挑みかかってくるヨハネの鼻先を、聞いているのか聞いてい
 ないのか、よく判らぬような中途半端な相槌で煙に巻き続け
 ている。
  ヨハネも、だが、負けていない。
 いま、抱え込んでいる問題だけは、宙ぶらりんにはしておく
 まいという勢いだ。


 「ちゃんと答えろよ!

  オレの言ってること、判る?

   今までだって口を酸っぱくして言ってきた。
  兄さんの女癖の悪いことなら、もういいって言って、
   オレだって諦めてる。
  兄さんはきっと病気なんだよ、病気!
   万年欲情してるんだ。

  でも、それも、もういい! 認めてやる!

   もういいから、さっさとあの女を抱けって言ってるんだ!
  場所だって、幸い客も誰も乗せてないんだ。

   好きだろ、変な場所。
  お好みの所へ連れてって、思い切り抱きまくれよ!
   廊下だって階段だって構わないぜ!
  オレは部屋で好きな音楽聞いてやりすごしてる。

   聞こえない振りも見てない振りもしてやるから!」


 ………ちらりと横目で見れば、イサクは、いっそ頑固に
 見えるくらい、退屈な表情を固持して、皿の上に乗った
 ジャーマンポテトとソーセージをフォークで右へやったり
 左へやったりしている。

  あれは、一体、話を始める前に頼んだものか、話を始めた
 後に頼んだものか………

  イサクがぷすぷすとソーセージを、もう食べる気もなくした
 風に八つ当たりぎみにつついているのを見ると、蔡も、別に、
 自分に何をされているわけでもないのに、妙に痛い気がして、
 顔を歪めて目を背けてしまっていた。
  食えなくなってしまったのなら、せめて、下げさせれば良い
 のに。

  どうやら、この予定外の航海の原因になっている女の処遇に
 ついて揉めているらしい。
  興味もないフリをしながら。
 魚を箸で器用に開きながら。
  だが………息は無意識に潜めている。
 ヨハネは彼が同じフロアに居ようと居まいと、関係ないようだ。
  大声で話し続けている。


 「抱いて、気が済んだら、兄さんはすっきりするんだ。
   それで初めて目が醒める。
  女なんて、どれも同じだって。

   でも、なんだって?
  約束した?
   航海の間中、嫌がることは何もしないって?
  無理矢理触れないって?

  兄さん………あんな目に合わされてんのに………
   まさか、まだ、頭の中身は眠ったまンまじゃねぇ
  んだろうなッ!

   本気かよッ?
  どう考えたってうまく利用されてんだよッ!
   いくら女に甘いったって………

   どうしてそれがわかんないわけッ?
  兄さん、あんた、ホントに………
   今日という今日はオレが言うッ! 
  ば………馬ッ鹿じゃねぇのッ!」   


   …………。
  顔をあげて、蔡はイサクらのテーブルの方を見た。
   口の中に入った魚を、噛んでいたことも忘れてしまった。

   しばらく馬鹿のように、口の中に魚を入れた頬を半分
  膨らませたまま、蔡は、皿の上のポテトとソーセージを
  飽かず転がしているイサクを見つめ続けた。
  

             (To Be Continue! → 002/003)  
ニックネーム かずマタ at 17:13| ショートストーリー

リハビリ速報(笑)

 いろォォォォんな意味でのリハビリのため、
速報も活用。

 もはや速報ではない、工房とどうちゃうねんと言われると、
つらいわァ(苦笑)

 ま、そのうち、速報らしい速報に戻しますので、
笑って笑って、許されて下されよ………!

(びゅ〜ゥッと逃亡……!)





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 <アーク>2nd
ようやく、ちょっと更新しました………!

 でもなァ。
まだ本調子じゃないんだなァ………。

 イサクの段なのに、切れ味が悪いよ、マタ作………。
もっともっと。

 気持ち、入るはずですよ。

 やっぱ、要、リハビリだ………!
うぅぅ、こうなりゃ、なりふり構わず、
 頑張ってやるッ。
ガンバリマスともよッ!
 うぉぉぉぉぉッ!(←出た………怖ッ)

 リハビリだ、リハビリだ、リハビリだ〜ッ!
(馬鹿の一つ覚えたぁこのことだねェ。
  馬鹿はリハビリじゃあ治らンらしい………笑!)
ニックネーム かずマタ at 16:41| いちゃくらぶ速報

2005年09月21日

カフェも、徐々に………!

 カフェの方も、徐々に昇って来ております………!

細田VS桜木。

 これが何度目になりますか。

最初はぶっ倒れていた桜木も、
 最近ではちゃんと口答えができるようになって参りました。
う〜ん、強くなったもんだ!


 さて………美耶子を遮って、細田が匂わせている、
『桜木ならわかること』。

 それは………むろん、桜木にとってかけがえのない妹、
涼に関することで。
 また、桜木が涼から自分は離れた方が良いのではと、
常に胸の奥底に抱いている不安の、
 その理由、桜木にとって、何より痛い事であったりします。


 涼自身もそのことはよく判っている………
それは、そんな事実であったりするのですが………。



IMGP4793.JPG

(「兄上のために、私は、在る。
   だから、だれのものにも、ならぬ。
  我が身は、兄上のためだけのもの。
   いと尊き、我が兄上のもの………!」)



 今回のストーリー・ピックアップは、
以前、葛葉神道家で、桜木が老翁から涼を解放しようとしたときの「防衛戦」と、
涼が<アーク>で目を覚ましたときの、「兄上?」

 このあたりを見返しておいて戴くと、今後の<アーク>ともども、
一回り上を楽しめるかもしれないかな、なんて………。

 そう………そういえば!

 涼の姉で桜木の妹。彼らの間には、
もう一人、行方不明の姉妹、絵美子がいることも、
 どうかどうか、お忘れなきよう………!

いまだ一度も姿を見せぬ彼女ですが、
 一体、いま、どこで、何をしているのか………!

 涼は恋慕に近い思いで遭いたがっておりますが、
桜木はそうでもなさそうなことも。

 果心堂が、以前、桜木に、絵美子について、
涼に教えるべきだと諭したことがあったとき、
 桜木が激しく拒絶したことも。



 桜木と涼のいた山奥の小さな邑。十文字の、その存在意味。
フェスタでは、まだ明らかになりませんが、
 彼らが生きることに向かいあい続ける限り、
少しづつ、その外皮が剥けてゆきますので………!


 うぉおぉぉぉぉッ、がんばれ、マタ作ッ!!!
きっと、書き切るのだッッッッ!
 そこを書ききれないと、
桜木たちの物語の意味がなくなってしまうんだからね〜ッ!
(うぅ、言うは易し、行うは………だけどな。まったくなァ。ハァ!)
ニックネーム かずマタ at 03:35| ストーリー・ピックアップ!

苦闘しておりますッ!

 おこんばんわッ!
マタ作です〜ッッッ!!!

 苦闘しておりますよ、<アーク>2ed ………!
お話にというより、ブログという形に………(笑)

 うーん、さっぱりわからん!(笑)

体裁が整いきらなくて、
 しかし、更新したくて、
まぁ、とにもかくにも、<アーク>2edなんとか仮オープンッ!

 ぬぅ………! ま、こんなもんか………。
(で、このまま突き進みそうだな〜。笑!)


 ちゅうことで、明日は「いずみ」を更新するぞ〜と、
まぁ、ウキウキ・ワクワク………ッ!
 BGMはまたしてもバリバリに「アマイカジツ」!
脳味噌の中がすっかり蔡モードであったりしまして………
 ぎゃーぎゃー心の中で叫びながら、妄想逞しくしておりますッ。
いや〜………楽しすぎるッ。
 (言っとけ、幸せモン! 笑)

 もう、これで本気に食ってく方法ってないもんか?
のたうちまわりたいくらいに、
 蔡めが書きたいんだよゥ………ハンカチ噛んで、
きぃぃぃッ、って感じですよ、もう(笑)



 IMGP682.JPG


 2ed では、イサク、御免、分が悪いかなァ……ッ。
だって、だって、蔡、可愛いんだよぉぉぉ………ッ!

 あぁ、たまらん、心の不自由すぎる方ッ。

どうしよう、幸せにしてあげちゃくなっちゃうのよ、その、
 たまんない不器用さッ!

熨斗の上にリボンかけて、
 早めのお歳暮に涼ちゃんくれてやりたい………!
でも、きっと、素直に受け取りゃしないだろうなぁ………!
 絶対、嫌そうな顔するんだろうなァ。

嫌そうで、迷惑そうな顔しながら、
 毎日、いそいそ、手みやげなんぞ買って帰ってきそうで、
あぁ………可愛い………ッ!

(ごめんよ、イサク〜ッッッ!!!
  でも、今の私は、
 絶対、蔡偏重やわァ………!笑!)
ニックネーム かずマタ at 03:12| いちゃくらぶ速報

2005年09月16日

「緑陰」  BY喜媚さま!!!

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  カフェの裏に広がる雑木林。
 それを前にして、ひとり佇む人影。刃。
  強くなり始めた陽射しも気にせず、裏庭の端に立って、いつか立ち回りを演じた場所を少し遠くに見ている。

 半歩先の柵は、結界の境。

 店長手作りの、その小さな柵より先に触れた途端、<オモテ>の誰かが飛んでくる。大体において、それは、眉間のしわを増やした有坂氏なのだが。

 通りすがっただけのはずが、気がつけばそこまで近寄り、暑さも忘れてじっとその林間を見てしまっている。

 セミの声が降るようなそこは、山の匂いを含んだ冷気が広がり、刺すような夏日の降るこちらと比べて別世界のようだ。


「……果心堂」


 呟き、その木立の間に、翻る銀髪が一瞬見えたような気さえして、顔を歪める。

 目が痛い。




裏2.jpg




「――ッ」


 たまらず、額を押さえ、かたく目を閉じてうつむいた。
頭を振っても、脳裏に蘇る、あの手合わせの記憶。
 間近で見た、驚いた顔。あの時は、こんな事になるとは思ってもみなかった。


 ――強いな。あんた。

  帰りがけに刃が言うと、面はゆそうな顔をされた。無理矢理いつもの顔に戻して、当たり前だ、と返されたから大笑いした覚えがある。それから、なりゆきと親切心とで暫く居座り、朝晩顔を合わせる日が続いたが、悪い気はしなかった。状況はどうあれ、面白かったのは事実だ。まるで、十かそこらの小娘に戻ったような気分で。


 ――悪いこたァ言わねぇ、魔はやめときな、魔は。


 攫った本人との一騎打ちの最中、投げられた言葉。言い方に、一気に頭に血が上った。それさえなければ変な奴、というところだったが、もはや彼の評価は地に落ちたに近い。

 薄く目を開いて、くっきりと影の落ちる下生えが見える。

 何故そんなに頭に来たかはわからない。正義の味方なんて大嫌いなものを嘯かれたからだろうか。

 気に入っているものを貶されたからだろうか。それとも。


 今更考え込んで、刃の口元に妙な笑みが浮かんだ。





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「……おやおやァ?」


 額を押さえていた手が顎に下りる。引きつる、困惑が混ざった笑み。


「それは、ちょっとマズいんじゃねーの? つか、え? どうなのソレは」


 ぶつぶつと独りごち、乾いた笑みを単調にこぼす。


「あっはっは…………違うよなー。たぶん」


 面白いには面白いが、違う。何と違うかは考えないようにして。


もう何をしに出たのかも忘れ、家の方へ戻りながら、意識的に別の事へと考えを向ける。

 たとえば、永久牢獄の事とか。

入れることしか方法の無いという、全ての理を止める空間。



(理屈から行きゃ、入れる瞬間には理が動いてるって事だよな)



 その為には、入口となる所まで行く必要と、それを開くことの出来る術者が要る。しかし場所すら知らない上に、その僅かな隙を確実に突ける保障も無い。



(あのなめこタラシ込みゃ何でも喋るんだろうが……ぞっとしねーなー)



 引きつり笑いを浮かべつつ、家の方の玄関を上がって、タメ息をひとつ。何にせよ、封鎖から脱出しなければ自由には動けない。


「結局ソレか……」


 居間の近くまで来て呟き、左手の移植ゴテに気付く。


「……あ」


 荒らされたっきりの前庭の花壇に手を入れようとしていた事を、やっと思い出した。行きがけにじょうろを拾って行こうと裏から出たのに。

 また戻って靴をつっかけて出、前庭へ回り込みながらちらりと雑木林に目を向けた。


「どうにか上手いこと穴見つけて、引っぱり出さねェとなァ、お姫様?」






裏4.jpg



 ぴかぴか(新しい) 「人形遊戯」の喜媚さまから、はぅッ!と、腰がとろけそうな
  物語を戴きましたッ!!!

   果心堂捕縛後のエピソード〜ッ!!! 刃さま、刃さま………ッ!!!
  果心堂、幸せ者すぎます〜ッ!!!
   「人形遊戯」さまでは、
   カフェの裏でのエピソードを他にもたくさんッ。
  アップして下さってて、それがまた、素敵なんすよ………ッ!
   一緒に見て戴けると、さらにお話を楽しんで戴けると思いますッッッ!!!

   あとあと、果心堂捕縛については、トキコさまの囁きも、「天風雲路」にて、アップしていただいているのですよぅ!

  こちらも是非是非、遊びに行ってらして下さいませねッ!!!
   すっっごく、切ないので………!!!
ニックネーム かずマタ at 02:57| ショートストーリー

工房について………!

☆★☆ ☆★☆ ☆★☆

 工房。

機巧人形工房

 横文字になおして、ほら、<オートマタ・ファクトリー>(笑)!。


 ここは、私と桜木のカフェをつなぐ廊下みたいな存在で。
桜木のところにダベったり弱音を吐きにいくとき、
 ここで<繰り人>としての私になる………そんなつもりで
おります(あッ。あくまで、そんなつもり、の話。つもり、つもりッ!)


 想像のなかでは、木の床も粗末な、山小屋みたいなとこに、
乱暴な丸太をスライスしたみたいな長いテーブルが壁際に、
 大きなテーブルが部屋の真ん中にあって、
どの机にも、ネジだのノミだの、雑多なもので溢れていて、
 資料の本なんかがごっそり入った本棚もどっかりあって。


桜木が顔を覗かせる入り口には、
 どっかの温泉地の土産みたいな藍染めののれんが垂れ下がっていて、
背もたれのない木造の丸スツールが二三個、無造作に中央テーブルの
 下に入っていて、


 いつもタオルを頭にまいた<繰り人>こと私は、
背中丸めて、壁テーブルに向かって、あれこれ作業をしている、
 なんて感じで………(あわあわ、なんだか恥ずかしくなってきたわ!笑)
背中の方で、桜木が、コーヒー、中央テーブルにおいて、
 自分で飲んでいるって………(きゃあああ!)………感じでしょうか。


 私は痩せても枯れても、人間、なので。
奴がたとえ、コーヒーを煎れてくれても、差し入れにサンドイッチを
 持ってきてくれても、食べられない。
カフェは別なんですけれどね。
 お人形の皆さまにも、繰り人の皆さまにも、桜木、
あれこれ、お食事もお飲物も振る舞っておりますでしょ?


 あそこは特別なんです。
じゃ、そこへ行きゃいいじゃんって話なんですが、
 ………そういや、あんまり桜木とはカフェで話そうと
思わないナァ。
 きっと、私にはそれこそ、工房があるからだな………
 

 まぁ、とにもかくにも、工房では食べられなくて、
それで毎度、悔しい思いをしてる………
 なんてのが、勝手に頭の中でできているオキテであったりしますネ(照笑)


どうなんだろ?
 こんな事、あんまり人に言ったことないけど、
なんだって、こんな恥ずかしい気持ちになるのやら、
 わはは、わはは、書きながら、顔が赤らんできましたヨ〜
(はらほらひれ〜……やっぱ言うんじゃなかったかッ!赤×100)


 けど、もしかしたら、
私が死ぬようなそのときには。

 最後の夢の中で、奴が煎れた最高のお茶を戴けちゃったりなんか
しちゃったりしてね………!(ぎゃ〜ッ、恥ずかしいッ!赤)

 閑話休題ッ!

あぁ、思い切り本題から反れちゃったッ!


とにもかくにも、工房は、
 現実とお話の境界領域(マージナル)。


お話の桜木たちも、工房に入ってこれますし、
 無論、見ていただいている皆さまにも………
もしかしたら、通って戴いているのかもしれない、
 ここでは、お話の裏話があれこれと展開しています。


 ただ、境界領域なので、速報でこれまで、更新状況を
お知らせすることはないかナァと、思っておりました………
 たまに、気がついた方に覗いて戴いて、
楽しんでいただければ、と………まぁ、
 平たい話が、横着してたわけですが(わはは)

ですが、ですが、ですな。


 こっから以降、話を進めていく上で、あれやこれやの裏話、
お耳にいれさせていただいたほうが、
 よりお話を楽しんで戴けるような側面もありまして。


そりゃ、蔡篇のときに、毎日燃えて工房でぼやいていた、
 そんな事が、いま、<アーク>で朧気ながら
実現しているからでして………


 今のお話と平行して、工房や過去のお話頁の関連情報について、
この速報で、
 ストーリー・ピックアップとしてご紹介させていただこうと、
思っております!!!


 お話の本筋とは一歩置きますが、よりお話を楽しんで戴けるための
踊り場空間として!
 是非、こちらの方も覗いていってくださいませね!!!



IMGP5503.JPG



(たとえば、蔡篇のときから暖めていた、このシーンッ!
  この先の先に、多分、現実にアップできると思うのですが、
 試し撮りと暗中模索の様子が、
 蔡篇更新中に書いた、工房の「うっふっふ」近辺にごっそりあったりします!

 書いてるの、四月だぜ〜。いま、九月だぜ〜?
五ヶ月も考えて悶々としてたんだぜ〜?

 絶対、アホじゃ、私………笑!!!)
ニックネーム かずマタ at 01:43| ストーリー・ピックアップ!