2005年11月21日

千年帝国 「鎖」




「あぁ………すまないね、また、笑ってしまったか。

  だって、おまえは、いつも、同じ努力をしようとするから。

 都合、わたしの説明も、最初はいつも、同じになる。


  ほら………わざわざ、目覚めなくてもいい。

 それは不要の手間だから。


  いつもどおり、そのままで。

 どれほど<真実>に恋焦がれても。

  ………わたしの声だけ、聞いておいで」




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「そう。名前は無意味な標識。
 分別には、便利だが」



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「肉体? さらに無意味!
 最後には芥子粒ほどの証拠も残らない」



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「魂………! つきなみだが、とにもかくにも、まず、それだ!

 心。 ………掴めるものなら、誰しも掴むのでしょうがねぇ。

  さて、その価値を語るのに、相応しいの言葉を、
 わたしは、持たない」



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「おかしいくらいに、
  おまえは、ほんとう、しょっちゅう迷うね。………けれど、
 おまえがおまえであること、
  それ以外に、この世になんの意味がある?」



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「いとおしいほどに、よごされ、傷つくべく、
 用意された」



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「それをもつがゆえに、
  わたしはおまえを楽しむ」



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「おまえを待つ時間は
  苛立ちと、至福。

 おまえの居る時間は、
  さらに、その百倍の慈しみと憤り。

さぁ、もうこのくらいで十分だろう。

 目をお開け。
人に許された時間は、あまりに、短い………!」



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「 おまえは、わたしに遭わぬだろう。
 しかし、けして、手は離さぬ。
  おまえは………つねに、わたしのもの」



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 ………呪うべくは、すべての、『鎖』………!

せめて、目に見えるものであるならば。

 断ち切るすべも、あるものを。



*

ニックネーム かずマタ at 02:29| 千年帝国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月28日

「悪/熱」

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 夢ならば、醒めてくれよと、思うのだが。

どうも、夢ではないらしい。






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 やもたてもたまらず、ひっぱり出した。
そして、そのまま、連れて来てしまった。

 そのせいで、当分の間、世間の表舞台には戻れなくなった。
………というのに、まったく、不満も、不安も感じない。
 むしろ、別の事で今は頭が一杯だ。

 これが、どうかしているというのでなくて、
なんだというのだろう?





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 そう、この場所に逃げてくるにあたり、
彼は女を一人、さらってきた。
 いや、女をさらったから、逃げなければならなくなった。
どちらかというと、その表現の方が正しい。
 きっと。


そういう意味では、十分、彼は人生を狂わされたのだ。
 順風満帆と言うのはいささか辛い気もするが、
十分な地位もあり、社会的な信頼も持っていた。
 その地盤のほとんどが、いま、ほとんど
有効には利用できない。
 そんな状況に陥っているのだから。


 さらってきた女は、では、それと引き替えにするほど、
価値のある存在であるといえるか。
 たとえば、傾城、傾国の美女だとでも?


 ………いや、とても玲瓏たる美女だとは言い難い。
どちらかというと女傑だし、性格はそれに輪をかけて扱いづらい。
 気位も鼻っ柱も高いし、素直でないし、当然、そうなると
可愛いわけもない。


 つらつら考えると、どの角度から分析しても、
自分がこの女を伴わなければならなかった理由など、
 小指の先ほどの必要性も見いだせない。


 それなのに、連れてきてしまった。
その事だけとっても、世界は十分不条理で満ち満ちているようにも
 思われる。


 ………まぁ、すべての責を世界の不条理に押しつけるとするならば、
だが。





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 どうにも手放しがたいと思った一瞬があった。

それは認めよう。
 しかし、誰にでもある気の迷いだ。

 わからぬのはいつまでもそれを更新し続ける、
己の真意だ。

 彼に別に心を寄せている風があるわけでもなければ、
誰もが頭を垂れる彼の智に敬意を払うそぶりもない。

 むしろ、傲慢で高慢稚気て、腹をたてさせられることの方が多いのだ。
そして………
 それなのに、自分はその女をいまだ、手元におき、
いつまでもそれを許している。
 一体、それはいかなる理由があってのことか。





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 女を伴い、隠れて暮らす。

 毎日は、これまでも平板だったとは言い難い彼の歩んで来た人生の中でも、
とりわけ奇妙で、妙に穏やかで、変に刺激的でありすぎたりするが、
 また、女も積極的に彼の元から去ろうとしないところを見ると、
わりにこの生活を気に入っているのではないかと思える。


それを考えると、少しばかり………なんだ、胸の奥が泡立ち、沸き立つように、
 騒いだりするのが、自分でもたまらなく、嫌は嫌なのだが。







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 それでも。


ほんの稀に、この女が、自分の事を見て、苦笑めいてでも、
 その瞳を緩ませるとき。

己の中の何かに寂しげな横顔を見せ、
 僅かに、彼を頼る気配を見せるとき。

………彼が伸ばした腕の中で、
 黙ってその身から力を失わせるとき。


 全身に渡る得体の知れぬ震えは、
悪い熱のように、彼の胸を侵し、
 もっと得たい、もっと欲しいと、
時に激しい衝動さえ伴いそうになる。






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 保たれている現在のバランスは、非常に微妙で。


自らの指先一つで、すべてを台無しにしてしまいそうで。
 先をたぐる事が怖くなるあまり、つい、拳を握り、
逆に平然とした顔を作ってしまうけれど。


 動かないでいればいたで、
いろいろな事を思って、やはり、胸痛み、長い針でも
 心臓に突き刺されているような心地を味わっているのだ。


 本当に、自分の真意がどこにあるのか、
首をひねりたくなること、しきりである。
 ………しかし、それはもしかしたら、その女の方でも、
思いは同じであるのかもしれない。





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 この熱が、どちらかをじりじりと焼き尽くすことになるのか、
それとも、不完全燃焼のまま、鎮火となるのか。



 女も自分も、それを感じ、今はそれを待っているような気もする。
お互いがお互いに、まだ、事態を探り合っている。
 それが今、互いが過ごしている日々であるのだ。


 きっと………きっと、このままでは済まぬ。
遠からぬ日に、何か、結論を迫られる事態が起こる。
 もはや預言を受けていたかのように、
その予感は、確かなものとしてあるから。


 拒絶という大打撃に常に怯えている己をけして認めぬがゆえの、
時間の浪費。
 そう、己のことでなければ断じることもできようものを………
何かに追いつめられでもしたよううに、
 ジッと息を潜め、事態を静観しているのだ。


………いつか訪れるだろう結論が、たとえ、いかなるものであれ。
 けして、今はそれを進んで迎えに走る気はない。
そんな恐ろしいことは、とてもできそうにない。
 そんな風に思っているとはけしてけしてけして。
認めるつもりは毛頭ないが。
 半ば、露骨にばれている自分の思いに、自分で目を反らす愚も、
こうなると是々非々だ。


 甚だ受容的なこの姿勢は、自分らしくないと感じながら。
ここまで自らが他力本願になれること自体が、彼にとっては、
 もはや大発見の心地であるのだから。



 そう…………今はまだ、待っている。

 ただ、従容と、己の身を侵す悪い熱を、
骨の髄まで、味わいながら。
 遠からずやってくるだろう避けがたい事態に、甘く苦い、
戦慄さえ覚えながら。
ニックネーム かずマタ at 01:38| 千年帝国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月12日

「三点不一致の法則とその普遍性について」003/003(更新中)

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 自己ベストとして記録しておきたいようなスピードで、食事をすべて
たいらげた。
 そのくせ、何事もなかったように、しれっとして、ナプキンで唇を拭う。

急いで食べても、旨かった。

 さすが、世界に名を馳せたシェフ(の、魂だけ、だ。正確には)を、
引っ張ってきただけのことはある。
 その腕前は、まったくもって、嘉せられるべき!


 さて、それでは、と、立ち上がりかけたところで、


「お前は、勘違いをしている」


 イサクの静かな声がきこえた。

自然、腰を浮かせたまま、蔡も視線をイサクへと投げている。

 と………ヨハネに言いながら、イサクは本当は蔡に聞かせるつもり
だったようだ………細い笑みを浮かべたイサクと、
 ぴたりと目があったから、思わず顎を引く。


 ………くそ! ひるんでなるか。


 余裕を湛えた対手の微笑みに、はや、カチンときつつも、
それを表情に出すような素直な性格ならば、おそらくはいま、
こんな仕儀にはなっていない。

 イサクに向かい、何を言い出すことやらと、わざわざ、
目を細めてみせ、薄い笑みを浮かべて腕組みしてみせる。


 ヨハネはイサクが視線を彼に向けたのを見て、初めて、蔡の
存在に気付いたようだ。
 目をしばたかせて、彼とイサクの目線のやりとりに、驚いた
顔をしている。
 それだけ真剣にイサクを諫めようとしていたのだろう。

しかしそのような弟の気も知らぬげに、
 イサクは蔡を見て、続ける。


「セックスは終着点ではないよ………
  それは、そう思う気持ちもわからないではないが。

 男と女の関係に、終着点などない。
  ただ、与え、そして求めるだけだ。

 相手にさえ恵まれれば、おそらくその連鎖は永久にでも
  続けられる。

 そして、そのような相手に、
  この広い世界で………
 嫌になるような数の人間の中から、もし、
  出逢うことが出来たなら。
 きっと、人は、そのまま昇華してしまっても、
  けして、後悔はすまいよ。

  ………ヨハネ。
 男が生きる意味は、まさにそこにあると
  私は、お前に断じても良いがね?」


  ヨハネの名を口にしながら。

 その目は蔡の鼻先を、まるで、ぴぃんと視線で弾いて見せるか
 のようだ。大仰な仕草で、首を傾ける。


「まぁ、そのような思いをしたことのない人間に、なんと
  言っても、私の言葉の意味はわかりはすまい、か」


  むかぁッと来た!

  宣戦布告。
 それが今さらなら、領海侵犯だ!
  迎え撃ったところで国際法には抵触すまい!


  蔡は、イサクの言葉が、自分にあてての言葉のようには
 装われていなかった事も忘れ、手を腰にあて、馬鹿々々しげに
 首を横に振った。


「………ハ!
  理解したいとも思わないね!

 大の男が、女一人に満足して、それで、人生終わっても
 いいなんて、なんてお手軽な生き方だろう。

  男子たるもの、世に名を残す偉業を幾つ成し遂げられるかで、
 その生きてきた命の価値が定まる。

  そこに女の介入する余地などないね!

  少なくとも男から欲する必要はない。
 あるべきようにある者の所には、
  女の方から寄ってくる。

 雌の体というものは、そのように出来上がっている。
  子孫繁栄、種の保存のための本能が働くんだ。

 より優秀な遺伝子を残そうとする、
  それは生きとし生けるもののもつ、一種の真理だよ………!」


  彼の反論に、イサクの顔が、小癪な、とでも言いたげな苦笑に歪む。
 それでもいなされている感がある。
  視線で噛みつくように斜めに睨み付けると、イサクは肩をすくめる
 ことで鮮やかにそれをかわしてしまった。蜂蜜色の前髪の下から、女達を
 たやすくからめとる菫色の瞳が笑う。


 「ならば、お好きに。
   お前はそのように待っているがいいよ。
  私は、止めない」


   ぎぃぃッと、奥歯を噛みしめて思わず身をひいてしまいかける。
  引いてたまるかと思うから、かえって、肩をのりだして、
   言い返している。


 「納得ゆかないと?

   では、大中国の歴史に鑑みてみるといい!

  遠くは玄宗皇帝と楊貴妃! かの赤兎馬の英雄、呂布と貂蝉!
   近くは毛沢東と江青!

  名のある男が女を求めて、それが男のためになったためしはない!」

   イサクは手を後ろに持ってゆき、頭を掻いた。

  「………私の引き合いに出すならば、
    せめて曹操孟徳」
  
   ………こいつは!
  ひきつり笑いに片頬を歪めながら、蔡は斜めにイサクを睨みつける。


  「いつかその道楽で身を滅ぼすぞ………!」

  「望むところだ。
    潤いもなく本に挟まれて干からびるよりは、
   余程、私にふさわしい。

    思った女の肌に触れるために死に至る。
   以外に、私の死にそうな事態が思いうかぶかね?」   


   間に挟まった形で、ヨハネが、ここでどうしてイサクと蔡が口論という
  形になるのか、ついて行けずに、目だけ、慌て、困らせている。
   それは理解できぬだろう。
  だいたい、蔡にも判っていない。

   どうして自分がそのようにムキにならねばならぬのか。

  もしかしたら、イサクにも掴み切れておらぬのかもしれない。

   この男もまた、出会い方が少しばかり特殊で、相手の質はさらに特殊な、
  しかしいつもと変わらぬただの恋愛騒動に、ただ、思いもかけず、
   数少ない己の理解者であり親友と言っても良い蔡が嘴を挟んできて、
  話が少しややこしくなっている、という………
   その程度に理解であるのかもしれない。


   しかし、それにしては、自分たちは、少し、熱くなりすぎてはいないか………!



   



*****   Sorry! Now Writting!   ***** 
*****   Please Wait a minuits!   ***** 
ニックネーム かずマタ at 02:39| ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

 

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